「過払い金」民事再生よりも破産が債権者の利益になる場合、民事再生は不可!

債権
区分
不良

主文

本件抗告を棄却する。

事実及び理由

1本件抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨及び理由は,別紙「即時抗告申立書」(写し)のとおりである。
2当裁判所の判断
当裁判所も,抗告人(再生債務者)株式会社A(以下「A」という。)についての民事再生手続(札幌地方裁判所平成15年(再)第14号)はこれを廃止すべきものと判断する。
その理由は,次のとおり付加,訂正するほか,原決定の「理由」欄に記載のとおりであるからこれを引用する。
(1)原決定2頁7ないし8行目,3頁10行目,15行目,4頁11ないし12行目の「米国倒産処理手続」をいずれも「米国和議手続」と改め,同3頁12行目の「チャプター7」の次に「(米国清算手続)」を加える。
(2)同4頁19行目から5頁11行目までを次のとおり改める。
(3)再生計画案について民事再生法174条2項4号に定める「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」との再生計画不認可事由があるかどうかは,主として再生債権者が再生計画によって得るべき利益と債務者の破産によって債権者が受けるべき配当とを比較してこれを判定すべきであり,後者が前者を上回る場合のほか,再生債務者から説明がなされないために両者の比較ができないような場合には,再生計画に賛成しない再生債権者の権利が再生計画の定めに従い変更されるのを正当とする根拠を欠くことから,上記の再生計画不認可事由があるものと解するのが相当である。
そして,上記の認定事実によれば,Aが提出した再生計画案において,賃貸不動産に入居中の賃借人の敷金・保証金返還請求権を除く再生債権の弁済率が1パーセント(ただし10年間の分割払い)とされているのに対し,Aが破産した場合の配当率は,本件長期貸付金を零円と評価すれば0.1パーセントに止まるものの,本件長期貸付金が再生手続開始を申し立てる前のAの決算報告書のとおり68億1951万4614円あるとすれば,単純計算して24.0パーセント(調査委員の平成15年12月1日付け調査報告書によるAの資産額約3318万4000円に上記の68億1951万4614円を加えた合計68億5269万8614円が負債額合計285億4257万9000円に占める割合)もの高率になると算出されるのであるから,再生債務者であるAとしては,本件長期貸付金の適正な評価額が零円であるか,少なくともその適正な評価額を資産額に組み入れて計算しても破産した場合の配当率が再生計画による弁済率1パーセントを上回るものではないことを相応の根拠をもって説明すべきであると判断される。
そして,本件長期貸付金が約68億円もの高額なものであること,再生手続開始を申し立てる直前まで本件長期貸付金がAの決算書類に計上されていたこと,さらには融資先であるB社がAの100パーセント子会社であることなどからして,Aが本件長期貸付金の使途,回収見込みなどに関する資料を全く持ち合わせていないということはおよそ考えられず,Aが本件長期貸付金の適正な評価額を説明することにそれ程の困難はなかったものと推認することができる。
しかるに,上記認定のとおり,Aは,本件長期貸付金の評価に関連して,B社が米国和議手続(チャプター11)の申請を行っている旨の事実と異なる報告を再生手続開始申立時から行い,平成15年7月10日の再生手続開始決定から3か月近く経過した同年10月6日の再生計画案提出時に至ってもこの説明を訂正することもなく,その後の監督委員らからの再三の資料提出の要請により,開始決定時から4か月以上経過した同年11月25日になって突如としてB社が米国和議手続(チャプター11)の申請を行っていなかった旨を報告したものの,その後も本件長期貸付金の評価について具体的な根拠を伴った説明をしていない。
抗告人らは,当審においても,英文の報告書(甲1の1)を提出しながらその内容の正確性についてみるべき説明をしていない。
そうすると,Aが本件長期貸付金の適正な評価額を十分な根拠に基づいて説明しないために,再生債権者が再生計画によって得るべき利益とAの破産によって債権者が受けるべき配当との比較ができないのであるから,再生計画の決議は,再生債権者の一般の利益に反するものというべきである。
抗告人らは,Aは監督委員及び調査委員の事情聴取に応じ,報告書を提出し,要求された資料は可能な限り全て提供し,本件長期貸付金が回収不可能であることの立証に可能な限り努力したのであり,本件長期貸付金の評価を零円と報告したのは,回収可能な債権の存在を隠したり,虚偽報告を行ったりして,意図的に再生債権者に対する配当を小額にしようとしたものではない旨を主張する。
しかし,上記に説示したとおり,Aが本件長期貸付金の使途,回収見込みなどに関する資料を全く持ち合わせていないということはおよそ考えられず,Aが本件長期貸付金の適正な評価額に関する説明を尽くしたものとはいい難い上に,仮に他に客観的な資料がないのだとしても,Aの説明によっては再生債権者が再生計画によって得るべき利益とAの破産によって債権者が受けるべき配当との比較ができないのであるから,再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反する旨の上記判断が左右されるものではない。
抗告人らは,民事再生法169条1項3号,174条2項4号の「再生債権者の一般の利益に反する」とは,再生計画より破産手続によるほうが弁済率,弁済の時期,弁済期間等を総合考慮して実質的に債権者全体にとって有利な場合である旨主張するが,上記の規定を抗告人ら主張のように限定的に解すべき理由はなく,上記に説示したとおり,再生債務者から説明がなされないために再生債権者が再生計画によって得るべき利益と債務者の破産によって債権者が受けるべき配当との比較ができないような場合を含むものと解するのが相当である。
抗告人らは,Aは本件長期貸付金の回収ができないことが破綻原因となって民事再生手続開始申立てに至ったものであり,また,現在存在する資料は,十分な証拠とはいえないとしても,本件長期貸付金の回収が見込めないことを裏付けるものばかりであるから,本件長期貸付金の回収の可能性は低い旨主張する。
しかし,本件長期貸付金はAの決算書類上約68億円もの高額なものであり,その極く一部でも回収できるのであれば,債権者にとっては破産による配当を受けた方が有利ともなり得るところ,その程度の回収も不可能であることを認めるに足りる資料はない。
抗告人らは,AにおいてB社が米国和議手続(チャプター11)の申請をしたものと誤認したのはB社の代表者との連絡ミスによるものであり,また,B社は破産専門弁護士から資産がなく再建の可能性がないからチャプター11の申請はできないときいてその申請を中止したのであるから,そのこと自体B社が破綻状態にあることを物語る旨主張するが,そのようなことのみでは本件長期貸付金の適正な評価額が零円ないしそれに近いものであると認めるには足りない。
抗告人らは,Aの再生計画案について債権者集会の決議に付するのが相当である旨主張するが,以上のとおり,本件の再生計画の決議は再生債権者の一般の利益に反するものであるから,抗告人らの主張はそれ自体理由がない。」3よって,Aの再生計画案については,民事再生法169条1項3号,174条2項4号の事由があり,決議に付するには足りないものとして,同法191条2号により本件再生手続を廃止した原決定は相当であり,本件抗告は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり決定する。

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